未熟女でも大人になっていいですか?
(そこまで決めといてまだ悩むのか。いい加減にしてくれよ)


ーーとは言えず、二つの服を羽織った姿を想像しながら答えた。


「断然、薄桃色の方でしょう」


だって、自分が好きな色だから。


「ふぅん、そう?」


気に入らない返事だ。


人に聞いておきながら納得がいかないのなら、最初から聞くなよ…と言いたくなる。


『ヤマガタ ミツ』は名残惜しそうに菫色のコートを手放し、さっきの店へ戻った。




「うん!やっぱりこっちの方が色が綺麗!」


自分に似合う似合わないじゃないんだな…と呆れ、それでもやっと付いた結果にホッとした。


「すみませーん、これ下さい!」


僕の苦手を呼びだし商品を示す。


「この薄桃色のコート下さい。そのまま着て帰りますから包むのはこっちの上着にして」


出会った時から身に付けていたグレーのコートを脱いだ。



「少々お待ち下さい」


脱いだコートと商品代金を手にしてマネキンが去る。



(やれやれ……やっと解放される)


ホッとしたのも束の間、『ヤマガタ ミツ』は次の難題を突き付けた。


「ねぇ、喉が乾いたからフルーツパーラーへ行かない?」


「パ、パーラーですか…」


甘ったるい香りが漂うあの空間だよな…と想像する。


「そうよ。いい買い物できたし、お礼に何か奢るわ」


お礼とは言え、女に奢って貰うのは厚かましい。

しかしながら…と声に出しかけ、手持ちが少ないことに気づいた。


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