未熟女でも大人になっていいですか?
(まぁね、最初からどうも変だなと思いながら来たんだし、仕方ない部分もあるけど……)


初めて会った時のイメージしか頭になかった為、この席に案内されて最初に飛び込んできた彼の姿に驚いた。



似合いすぎるスーツに身を包んだ男に胸が躍った。

辛うじて表情に出さずに席へ座り、落ち着こうと思って辺りを見回してはみたけど、やはりどうしても視界に入れたくなって目を向けたのにこの結果。

釣れない態度を露わにされた今、私はなんと言ってこのバンビに話しかけたらいいのか。



「ーー待たれていた方は、やはり別の『ヤマガタ ミツ』だったのね……」


精一杯の強気を押し出して呟いた。


目の前に座っている男の顔がバツの悪そうに歪む。

その表情を奥歯を噛み締めながら眺め、思いきって問いかけた。


「その方とお見合いする予定だったんでしょう?」


男はちらりと私に目を向けて頷く。


「……そうです。そのつもりでいました。でも、どうして貴女が此処に?」


テーブルの上に握り拳を置いて聞く。

私は持ってきた手紙をバッグの中から取り出し、テーブルの上を滑らせて見せた。


「貴方の書いた手紙は土砂降りの雨に降られ、墨で書かれた表の住所がほぼ読めなくなりました。

困った郵便配達員は何とかしなければならないと判断され、辛うじて読めた名前だけを頼りに私の元へ届けられたんです。


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