未熟女でも大人になっていいですか?
「僕は片仮名のミツさんよりも漢字の蜜さんに興味が湧いてしまった。だから、是非ともまた会ってくださいませんか?

今度はもっと肩肘張らず、ゆっくりと話せる場所でお茶が飲みたい」


熱心に頼み込む辺りはバンビな彼と変わらない。

でも、離そうとしない腕の力は、理想通りの猟犬だと言っても過言ではない気がする。


「お茶なんて何処で飲んでも同じだけど…いいの?私は貴方が思うほど可愛い女じゃないわよ?」


気性が荒くて、じゃじゃ馬みたいな性格だと兄に言われたことがある。

だから、その本性を見られてはいけないと思い、男性とは付き合いもせずにきた。


「確かに素直な性格とは言い難い気がしますけど、それでも時々見せる照れた顔が可愛いです。

コートを買いに行こうと誘った時の笑顔も忘れずにいました。そうでなければ、僕はとっくに貴女のことなんて忘れています」


聞いた筈の名前も忘れていた。

手紙の話を持ち出されるまで、意味が分からずにぼんやりとしてしまったそうだ。



「酷いお話」


「でも、もう二度と忘れません」


微笑み合うと距離が縮まっていく気がする。

バンビな左官工の彼とじゃじゃ馬娘の私。

性格も全く違うのに何処か似てる気がする。



「今度は何処で会いましょう?」


「そうね。取り敢えず無難に公園の噴水前とか?」


「じゃあ外でお弁当でも食べましょうか?」

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