好きだけど、近づかないでくださいっ!
スキサケは発動中だけれども、つい目の前の課長を見てしまった。

だって、こんな人だと思わなかったから。

「あ?なんだよ?こっちが本性に決まってんだろう?課長って言ったって俺だってまだ二十代の若者なんでね」


あれ?十秒以上、課長のことを見ているのに別に避けることはない。むしろ、普通に見ていられる。

もしかして、この本性だという課長はスキサケ対象外?


「あの、普段からそうしてもらえませんか?」


「はあ?お前、バカか。上に立つ人間がこんな喋りしてたら示しつかねえだろ。ってか何、お前今更普通に話してんだよ」


「よくわからないんですけどその口調なら大丈夫みたいです」


本当によくわからないけれど、私の頭の中で普段の課長と今の口の悪い課長は同一人物という認識をしていないらしい。


不機嫌そうに音を立てて立ち上がる姿も別に避ける必要もなく、見続けていられるし、お腹の底も熱くならない。


そう、思っていたのに。
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