好きだけど、近づかないでくださいっ!
急に俺様が顔を出してきた。あれ?気のせいかな。課長のときよりもなんだか動機が激しい気がする。

「そうか、でもまあヤキモチだったわけか」

あれ?この人は課長だけど俺様。まさか脳が同一人物だと認識した?

そんな私の動揺に俺様は全く気がついていない。

「ねえねえ、本当に行くの?」

「当たり前。なんのために梨花、休み時間に下着買いに行ったと思ってるの?」

突然、聞こえてきた話し声、二人で目を合わせた。会話の内容からするとあの女の子だ。どうしよう、こんなところ見られたら。

急いでシュシュの中で繋いだ手を離そうとすると、きつく握られ引っ張られた。そして、そのまま机の下に隠れるようにして二人で潜り込んだ。

「あれ?誰もいなくない?電気はついてるけどパソコンもついてなさそうだし」

ドア付近から聞こえてくる声。このまま近づいて来られてこんな場面を見られたらと不安がる私とは対照的にスリルを楽しむ俺様。

「もっとこっちに来いよ」

逆の手は背中に置かれ、もっと引き寄せられる。その瞬間、パンと音が響いて何かが弾けるかのようにスキサケが発動した。

課長ではなく、俺様の椎野康介に。
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