エリート上司と偽りの恋
結局あれから一週間、主任はかなり忙しいらしく基本直行直帰。会社に戻ってくることはあってもすでに私が帰った後だったりで、主任の姿を見ることはなかった。


「おはよー」

「はぁ、おはようございます」

私とは対照的に、主任に会えないことですっかり元気がない桐原さん。

私はデスクに座り、パソコンを起動した。


「加藤さん、そういえば新システムの具合どう?」

向かいのデスクのパソコンの横からひょいっと顔を出し、鈴木さんが聞いてきた。

「はい、今のところ問題ありません」

三日前からパソコンの受注のシステムが新しく変更になっていて、伝票入力が簡単になったし受注の状況もかなり見やすくなって、前よりも仕事の効率が上がっていた。


「今日のオーダーは……っと」

パソコンの画面を見つめながら仕事をしていると、主任がやってきた。心の準備ができていなかった私は、焦ってファイルを落としてしまった。


「おはようございます、ちょっと加藤さん来て」

そう言って私を手招きした主任は、なんだか急いでいるように見える。

というか、目が怖い。

久しぶりに会ったのに、ドキドキしている場合じゃなさそうだ。


「なんでしょうか」

真剣な表情で部長と話をしている主任に近づいた。

「これ、どういうこと」

あの日見た主任とは別人なんじゃないかと思うくらい、厳しい表情で私を見つめる主任。

手渡されたのは、印刷された受注伝票。それを見た瞬間すぐに気がついた。


「これって……」

変更したはずの代理店の住所が、前の住所のままになっている。日付を見ると、二日前の受注伝票だった。


「今日クレームがあったよ。まだ商品が送られてこないって」

「あの私、すぐにもう一度発送の」

「もうやった。先方へのお詫びもすでに終わってる」

冷たくそう言い放った主任の言葉に、目の前が真っ暗になったような感覚に陥る。




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