エリート上司と偽りの恋
八月中旬、世間ではお盆休みが終わろうとしている頃だけど、うちの会社にお盆休みはない。

夏休みは仕事を調整しながら、ひとり四日間交代で取るのが暗黙の了解となっている。


あれからシステムトラブルなどは見受けられず、今は冬のキャンペーン商品発売に向けて営業部は慌ただしく動いていた。

キャンペーン商品はだいたい半年前から企画開発をしていくため、今は夏だけど冬に発売する商品の販促品の準備をする。


「今日から桐原さん夏休みか」

綺麗に整理されている隣のデスクを見ながら呟いた。


「販促品だからって気抜いてないか?この販促品を見て初めて商品を手にとってみようと思うお客様もいるんだ。午後の会議までにしっかり考えろ」


今日も朝から篠宮主任の冷静だけど鋭い怒声が響いている。

販促品を考える営業推進部も大変だ。


冬の販促品は確かチークとトートバックだったかな?

そういえばこの前久しぶりにチークをつけて友達に会ったら、若く見えるって言われたんだ。

普段はあまりつけないけど、うちから出てるポンポンチークは使いやすいし、これからは会社にもつけて行ってみようかな。

主任、気づくかな……。『頬っぺた赤いぞ』とか言われそう。

想像してクスッと笑いながら、メモ用紙にササッと絵を描いた。


「なに笑ってんだ?」

「はっ!いえ別に」

コーヒーカップを持った主任がいつの間にか後ろに立っていることに気づき、今描いた絵を手で隠した。


「今なんか隠しただろ」

「え?いや、隠してません」

「いいから見せてみて」

主任の手が私の手と重なり、咄嗟に手を離してしまった。

主任、本当にずるい……。そんなことされたら離すしかないじゃん。



< 24 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop