エリート上司と偽りの恋
「これ、加藤さんが考えたの?」

「考えたっていうほどじゃないですよ。ちょっとした落書きです」

メモ用紙に描いたものは、販促品として営業推進部で考えるチークのデザイン。


「色とか形状とか、詳しく教えて」

「え、でもこれは……」

「いいから」

主任の押しに負けた私は、ボールペンで描いたデザインの説明をした。

筒状のケースの本体は中身の色が分かるよう透明で、シルバーのキャップ上部には白でうちの化粧品のロゴマークと桜の花びらを描いている。


「ただそれだけですよ。ほんと、なんの捻りもない普通のチークです」

しばらくの間メモ用紙を眺めた主任はひと言「俺は好きだな」そう言って私の肩をポンポンと叩いて席に戻っていった。


デザインなんて私の仕事じゃないけど、推進部の人たちを見ていると、時々羨ましく思うときがある。

自分が考えたデザインの商品が人の手に渡るなんて、とても素敵なことだから。

だけど私は自分の仕事が嫌なわけじゃないし、向上心は無いとはいえ誇りは持ってる。

だからたまに家とかでも、こうやって落書きしながら妄想するのがちょっとした楽しみで、それで満足できるんだ。



お昼になり、私は一階管理部の前で亜子さんを待っていた。

今日は久しぶりに亜子さんとランチをする約束をしていたから。


「お待たせ、行こうか」


ランチといっても、節約のため会社近くにワゴン車で売りに来るワンコインのお弁当を買い、会社の屋上で食べる。


今日は暑いからか他に人は見当たらないけど、他の人に聞かれたくなかったから丁度いい。

まぁ確かにちょっと暑いかな。



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