エリート上司と偽りの恋
「加藤さんか桐原さん、悪いんだけどもうすぐ会議終わるから片付け行ける?」

鈴木さんの言葉に横を見ると、桐原さんは一生懸命パソコンに向かって受注伝票を作成している。

「手が空いたんで私行きます」



第二会議室に向かうと、会議を終えた営業のメンバーが丁度出てきた。

主任の横を通ったとき、やっぱり胸がズキッと痛む。


あんなふうに間違われて傷ついたはずなのに、すれ違っただけでドキドキして苦しくなって、やっぱり好きだと思ってしまう私は……身の程知らずのどうしようもない馬鹿だ。



テーブルを拭き、湯飲みを持って給湯室に入った。


「はぁ」

湯飲みを洗いながら無意識に漏れるため息が、余計に自分の気持ちを沈ませる。



「加藤さん……」


ーーカシャン


「あっ」

驚いて思わず湯飲みを滑らせてしまい、慌てて割れていないかを確認した。割れてはいなかったけど、安心できる状況ではない。


「驚かせてごめん、大丈夫?」

「だ、大丈夫です。なんでしょうか」

手を止めることなく、流れる水道の水だけを見ながら答えた。

今主任がどんな表情をしているのかは分からないけど、私の顔はきっとこわ張っている。


「聞きたいことがあって」

「なんでしょうか」

さっきから同じ言葉しか出てこない。



「言いたくなかったら言わなくていいんだけど、お姉さんは……」


え……?


「お姉さんは今でも福岡にいるのかな?」




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