エリート上司と偽りの恋
どうしてそんなこと聞くの?なんて言えなかった。

会いたいってことだよね。


結婚してることは伝えたけど、それでもいいって言われたから、私は結衣の連絡先を教えた。

主任と結衣が会ったとしても、なにも起こらないってことは分かってたから。


どれだけ主任がかっこよくても、結衣は旦那さんを愛してる。

主任がいくら結衣を好きでも無理なんだよ。

無理なのに会ってどうするの?

七年前に一目惚れした人は、今すごく幸せなの。あなたの入る隙間なんてない。

せっかく会えても、ただ切なくなるだけなのに。


そうまでして、会いたいのかな……。



主任が去ったあとの給湯室で、勝手に出てくる涙を何度も何度も拭った。

泣く必要なんてないよ、これで私はずるずる引きずらなくて済むんだから。


だけど、神様は残酷だ……。




「遅かったけど、大丈夫?」

「すいません、大丈夫です。ちょっとお腹いたくてトイレに籠ってました」

戻るのが遅い私を心配して鈴木さんが声をかけてくれたけど、こんな小学生みたいな嘘しかつけない。


主任はいつ、結衣に会いに行くのかな……。


「……い」


「……おい」


「あ、はいっ!」

ボーッとしてしまった私が声に気づき振り返ると、新海君が眉間にシワを寄せて私を見ていた。


「ごめん、ちょっと考え事してて」

「今日、暇?」

「え?あぁ、まー暇だけど……」

「じゃー仕事終わったら久々に行くぞ」

「行くって……」


私の返事を聞く前に、新海君は自分のデスクに戻ってしまった。




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