エリート上司と偽りの恋
少しの沈黙の後、新海君はフッと微笑んだ。


「だよな。そんなの分かってるよ、加藤が誰を見てるのかってこともな」

「えっ、どういうこと?」


「まぁ俺が言えることはさ、人がどう思うかじゃなくて、加藤自身の気持ちが大事なんじゃねーの?」


再びビールを注文した新海君は、またいつもの私のよく知る同期の新海君の顔に戻っていた。



「そういえばもうすぐ誕生日だよな?」

誕生日か、あんまりいい思い出はないけど。

「うん、三十路へのカウントダウンが始まりますよ」


「加藤は自分をどう評価してるのかは知らないけど、俺が好きになった女なんだ、もっと自信持てよ」

そう言って笑顔を向けてくれた新海君。


「最高の誕生日になるといいな」


「ありがとう……」


私はまた新海君の笑顔に励まされて、勇気をもらってる。

最高じゃなくてもいい、せめて誕生日くらい笑って過ごせたらいいな……。



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