エリート上司と偽りの恋
「お疲れさまでした」
約二時間でイベントは終了し、私たちは会場を出ていく代理店の人たちひとり一人に扉の前で挨拶をしている。
まだ会場から出れないのは、全員が帰った後、総務部と一緒に片付けをするという仕事が残っているから。
代理店の人たちが帰ったのを確認して、急いで後片づけに取り掛かった。
両手に一枚ずつ袋を持った私は、各テーブルを周り分別しながらゴミを集める。
片付けが終わったらそのまま帰れると思うと、手や足がいつもよりスピーディーに動くから不思議。
「あの……加藤さん?」
突然背後から聞こえてきた声に驚き、振り返る。
「あの、明日から第一営業部に異動になります篠宮です」
「……」
「宜しくお願いします」
「あっ、はい……」
「片付け手伝えなくて申し訳ない。がんばってください」
嘘だ……。彼が明日から同じ職場で働く篠宮晴輝?
間近でその容姿を確認した私は、勝手に浮かんでしまう彼のことを必死に掻き消そうと、時々ブンブンと頭を大きく振りながら片付けを続けた。
「ちょっと加藤?どした?」
私のその姿があまりにも可笑しかったのか、声をかけてきた亜子さんの表情は明らかに笑いを堪えている。
「なんでもないです。これは自分との戦いですから」
「そ、そうなんだ。よくわかんないけど、やっぱ加藤って面白いわ。ほら、もう終わりだから帰ろう」
気付くと会場の片付けは順調に終わっていた。
「加藤さーん、ずるーい」
「え、なにが?」
外に出ようとした私の目の前で、桐原さんが口を尖らせて立っている。
「さっき篠宮さんに話しかけられてましたよね?ずるーい」
「挨拶しただけだよ」
「挨拶って、だって……」
約二時間でイベントは終了し、私たちは会場を出ていく代理店の人たちひとり一人に扉の前で挨拶をしている。
まだ会場から出れないのは、全員が帰った後、総務部と一緒に片付けをするという仕事が残っているから。
代理店の人たちが帰ったのを確認して、急いで後片づけに取り掛かった。
両手に一枚ずつ袋を持った私は、各テーブルを周り分別しながらゴミを集める。
片付けが終わったらそのまま帰れると思うと、手や足がいつもよりスピーディーに動くから不思議。
「あの……加藤さん?」
突然背後から聞こえてきた声に驚き、振り返る。
「あの、明日から第一営業部に異動になります篠宮です」
「……」
「宜しくお願いします」
「あっ、はい……」
「片付け手伝えなくて申し訳ない。がんばってください」
嘘だ……。彼が明日から同じ職場で働く篠宮晴輝?
間近でその容姿を確認した私は、勝手に浮かんでしまう彼のことを必死に掻き消そうと、時々ブンブンと頭を大きく振りながら片付けを続けた。
「ちょっと加藤?どした?」
私のその姿があまりにも可笑しかったのか、声をかけてきた亜子さんの表情は明らかに笑いを堪えている。
「なんでもないです。これは自分との戦いですから」
「そ、そうなんだ。よくわかんないけど、やっぱ加藤って面白いわ。ほら、もう終わりだから帰ろう」
気付くと会場の片付けは順調に終わっていた。
「加藤さーん、ずるーい」
「え、なにが?」
外に出ようとした私の目の前で、桐原さんが口を尖らせて立っている。
「さっき篠宮さんに話しかけられてましたよね?ずるーい」
「挨拶しただけだよ」
「挨拶って、だって……」