エリート上司と偽りの恋
それから会社では仕事のことしか考えていなかったが、時々見る彼女の姿にはドキドキさせられっぱなしだった。


でも、とても不思議な気持ちだった。


好きだという気持ちをどう表したらいいのかわからず、あれだけオーウェンに頼っていたのに、資料室での彼女の言葉を聞いたときから、彼女に伝えたい言葉や行動が自然とできるようになっていたんだ。


『もしたとえなにかあったとしても、主任はプライベートを仕事に持ち込むようなことはしないと思います!』


俺を庇ったように聞こえた言葉。たったそれだけで、俺の心は大きく揺さぶられたように感じた。

その瞬間、彼女に触れたい。好きだという気持ちをもっと伝えたい。そう思ったんだ。


今ならオーウェンや他の友人がしていたことも理解できる。

恥ずかしさなんて微塵も感じない。好きだから……ただそれだけだ。


そしてデートの帰りに、俺はもう一度気持ちを伝えようと決めていた。



俺だけを、見てほしいから……。


 ◇




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