恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
その時、先輩がきつく私を抱き締めた。

なにも言わずに。

「離してっ!」

「翠狼に何を言われた?」

「分かんないッ!覚えてない!離してっ!」

本当に、殺されそうになった事しか覚えていなかった。

確かに翠狼は、私に何か言ったのに、その内容が思い出せない。

思い出そうとしたら頭が痛くなって吐きそうになる。

ダメだ、本当に……。

目眩がして、頭が割れるように痛い。

「瀬里?瀬里!しっかりしろ!」

「もう、ダメ……」

ああ、私はどうなっちゃったんだろう。

「先輩、怖い……助けて……」

「瀬里、瀬里」

先輩が私を抱き締めながら名前を呼んだけど、徐々にその声が聞こえなくなって、私は何も分からなくなった。
< 152 / 305 >

この作品をシェア

pagetop