恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
「瀬里っ!」

あれは……雪野先輩……。

路肩にバイクを止めると、荒々しくメットを脱ぎ、彼は私に向かって駆け寄った。

「先輩っ」

「瀬里っ」

先輩が私を抱き締めたから、私は少し笑った。

だって凄く必死の形相だったんだもの。

「痛いよ、先輩」

「怪我してるのかっ?!翠狼にやられたのか!?」

先輩が、険しい顔で私を至近距離から見下ろした。

「先輩、暗示が解けたんだよ。もう、先輩といても私、気分悪くならないよ」

私がそう言うと、先輩が信じられないといったように小刻みに頭を振った。
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