御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
(だから、帰りたくなんてないのに……。)
そんな美月の思いとは裏腹に、容赦なく出張当日の火曜日がやってきた。
嫌だ嫌だと思ったところで、羽田から徳島空港までわずか一時間十分の空の旅である。
あっけなく故郷の地を踏み、美月は複雑な思いで澄み切った空を見上げた。
上京するためにこの空港に来た時は、二度と帰らないと決意したはずなのに、仕事とはいえまさかたった三ヶ月で戻ってくることになろうとは、思ってもみなかった。
だが帰ってきたものはしょうがない。
これから向かう鳴門市は、人口六万人以下の静かな街である。
仕事中に元彼や友人に会わないよう、街に出なければいいだけだ。
(外に出なければ問題ないよね、きっと……。)