御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

 だが美月よりも先に、向かいに座っていたトモが気色ばみ立ち上がった。


「ちょっとー! どういう意味よ!」
「ごめんごめん、悪い意味じゃないのよ。お祝いしに来てくれたんでしょ?」
「はぁー? 少なくとも私はあんたのために同窓会来たんじゃないし、友達に会いに来たんだし! なんでも自分を中心に世界が回ってると思ったらおーまちがいなんだからねっ!」


 元々仲がいいわけではないようだ。

 苛立ったトモの声に、居酒屋の中の空気が変わる。

 そして美月のことに気づいていた人間が、そうでない人間に「ほら……滉一の」「あー……」と、さざ波のように伝わっていく。


「トモ、声大きいって……」
「あっ……ごめん……」


 隣に座っていた女子がトモに座るようたしなめたが、周囲の好奇の目線に、それまで落ち着いていたはずの美月は、動揺し始めていた。

 
(どうしよう、何か言わなくちゃ……。でもこんな展開予想してなかったから……。)


 やはり謝って、即座にこの場から立ち去った方がいいのだろうか。

 自分のプライドを守ることがそんなに大事だろうかと、そんなことを考えた瞬間、隣に座っていた雪成がテーブルに持っていたグラスを置き、振り返りつつ立ち上がった。



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