初恋、でした。
あの日の、あの言葉、あの笑顔から、僕の中で朝日奈 悠はすっかり〝掴めないやつ〟で。


毎日、毎日つきまとわれているのに、なぜだか突き放せなくなっていた。


ふと気がつくと、もうあの花びらは見えなくなっていて。


そのことを、とても嬉しく思う。


思う、のに。


────俺。桜、好きだよ


それでもなお、あの声は僕の頭に響いてくる。


ああ、もう。


どうしてか、なんて。


考えることすら億劫だった。
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