永すぎた春に終止符を
「あの…」
安田さんが急に梨沙の方を向いて、かしこまって言う。

「はい」
つられて梨沙も背筋を伸ばす。


「えっと…牧山さんが、今度の飲み会に来るって聞いたので…」
本当におかしな人だ。
急にかしこまって何の話だと思った。


「原田さんが企画したのですよね?」
飲み会がどうしたんだろう…


「はい…そう、それです」

本当は、庶務課だけ、数人だけでやるつもりでいたのに、営業部まで話が広かってしまって、大袈裟なことになってしまっていた。

「これからは、前より顔を出そうと思います」

「そうなんですか…。よかった。牧山さん、そういうの今まで参加されませんでしたね」


「そう言えば、そうです。よくご存知ですんね」



「その日、俺も行くんです…だから、声かけてもいいですか?」


「隣に座ってもいい?」

「ええ…もちろん」

わざわさ確認することないのに、といいかけてやめた。

「そっか…よかった」


安田さんは、ほっとしたのかフォークを持つ手を緩めてしまった。
トマトクリームのパスタが斜めになって、今にも滑り落ちそうだった。


「あの…安田さん、ちょっと待って…」
私がかけた声で彼は、持ってたフォークを下に向けてしまった。

「あっ…」

という声と共に、ネクタイの上にソースがボタッと落ちた。

< 31 / 121 >

この作品をシェア

pagetop