永すぎた春に終止符を


「あっ…」
どうしようかとおしぼりで拭こうとしている彼を見かねて、口を出した。

「あっ、ちょっと待って、擦り付けないで…」梨沙は、思わず立ち上がった。

彼女は、彼のすわってる椅子の方に回り込んだ。ああ…ちょっと待って。
シャツに汚れがつかないように、ネクタイを外さなきゃ。


梨沙は、彼に近づいてネクタイを緩め、安田さんの首から抜き取る。
彼の喉元に顔を近づける。彼の顎が私の頭に触れてる。
梨沙は、ネクタイをはずし、汚れを押さえつけないように丁寧に拭き取った。

下から安田さんを見上げると、彼は緊張したように、かしこまって私を見ていた。

「替えのネクタイは、ありますか?」

安田さんは、まだ、驚いたみたいに動かないで固まっている。

「いえ…」

「庶務の方に予備がありますから、この後寄って下さいね。これ、もう少し汚れを取って、クリーニング出しときます」


「あ、そんな…えっと」


「会社の近くにある、クリーニング屋さんに出しておきます。代金はちゃんといただきますから、ご心配なく」



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