永すぎた春に終止符を
「ちょっと、ええっ?保田さん?」
いきなりぎゅっと抱きしめられて、こめかみのところにキスされた。
ただ、ふわっと抱きしまられるのと違った。
腕に力がこもり、彼がぐいっと、自分の胸を私の胸に押し付けてくる。
「ちょ、ちょっと待って…みんな見てる」
「見てないよ」
逃げようとすると、保田さんが私のほうに詰め寄ってくるから、後ずさりして、ベンチから落ちそうになる。
「どうしたの?」
腕でつっかえ棒してこれ以上、彼の体が密着しないようにする。
「シャ、シャツに口紅がつくから…」
「わかったよ。上に移動しようか」
エレベータで屋上まで言ってみると
家族連れが数組、小さな子供を連れて遊んでいた。
公園といっても、小さな庭のようになっていてコンクリートむき出しのスペースではなかった。
植物が植わっていて、ベンチも置いてある。私達は、公園を一周して元の位置まで戻ってきた。
彼は、風に吹かれながら手すりにつかまって景色を見ている。
「風、気持ちいいですね」
「ああ、そうだね」
彼は、景色なんて見ていなかった。