常務の秘密が知りたくて…
「もしこうしてお前とまた出会えたのが運命っていうものなら素直に感謝する。でも流れに身を任せるのはもう御免だ」

 そこまで言って一息つくと櫂は私の頬に手を添えて顔を近付けてきた。何も言えず目を逸らすことも出来ない。

「俺はお前をもう二度と離さないし、ずっと捕まえておく。覚悟しておけ」

 言い終わるのとほぼ同時に唇が重ねられた。そのまま身を任せているとベッドに再び背中を押し付けられて自分の下に滑り込ますようにして櫂は私の上になっていた。

 その間もずっと続けられる口付けに私は応えようと精一杯で体勢のことまで気にしている余裕なんて微塵もない。預けられる体重が重いけれどどこか心地よく、離れて欲しくなくて背中に腕を回してより密着させる。

「絵里」

 名残惜しく唇が離されて名前を呼んでくれる櫂の声が心を落ち着かせていく。慈しむように頬を撫でられて私はなんだか泣きそうになった。

『運命の人は見つかった?』

 運命なんて信じない。それでももし、もし彼が、彼と出会えたことが――

「ありがとう」

「どうした?」

 不思議そうな表情の櫂に私は微笑んだ。その瞬間、堪えていた涙が零れる。

「ありがとう、私のこと見つけてくれて」

 目を丸くした櫂の顔がくしゃりと歪む。なんだか彼も泣きそうだ。

「それはこっちの台詞だ」

 それからとびきり優しい顔をして笑ってくれた。出会ったときからずっと怒ってるようなつまらなさそうな表情ばかりして。出来れば笑って欲しいな、幸せそうな顔をして欲しい。その顔が見たくて。

 それを自分に向けられる喜びを噛みしめながら私も笑った。誰に訊かれても今、心の底から幸せだと言える。今度は自ら櫂の首に腕を回してその唇に口付けた、いつまでも離れないようにと願って。


fin.
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