常務の秘密が知りたくて…
「明日の午前中はお前も休みにしろ」

「お気遣いありがとうございます。でも」

「だから、もう少し付き合え」

 全部を言い終わらないうちに常務はソファに身体を横たわらせた。

「二十分経ったら起こせ」

 命令口調で言われてしまい私は何も言い返せない。私は目覚まし時計でもなんでもない。それでも既に常務の目は閉じられていて結局、拒否することが出来なかった。

「誰かが近くにいると眠れないんじゃないですか?」

 ぽつりと呟いた言葉に返事はなく、ややあって常務から規則正しい寝息が聞こえてきた。そんなことを気にしている余裕もないほど疲れているのだろう。私が特別だからとかそういう問題ではないのだ、きっと。

 勿体ないような気もしたけど、なんとなく見るのが申し訳ない気がして私は極力、常務の寝顔を見ないようにして自分のデスクに戻り作業しながら時間が経つのを待った。

 そろそろ二十分経った頃、タイミングを見計らって常務に近付き声をかける。

「常務、起きてください」

 それでも眠りが深いので私はソファの正面から回り込み常務の身体を揺すった。眉間に皺を寄せながら常務が身動ぎしたのでなんだか申し訳なくなってくるが、起こさないわけにもいかない。

「……す」

 ふと常務の唇がわずかに動き、何かを声にしたが聞き取れない。ようやくうっすらと瞳が開かれる。

「えり……」

 それも本当に微かだったが、自分の名前を呼ばれたことに私は驚く。そして不意に右手が常務にとられたかと思えば続いて雷に打たれたような衝撃が私を襲った。常務が私の手を口元に持っていき、甲に優しく口付けたのだ。
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