常務の秘密が知りたくて…
「キャ――――!?」

 大混乱の頭を抱えて振り払うような悲鳴を上げると、さすがに常務も身を起こした。

 テーブルに躓きそうになりながらも距離をとってから常務の顔を見ると、いつもの倍くらい眉間には深い皺が刻まれ寝違えたのか首に左手を当てている。

「起こせとは言ったが、誰が耳元で叫べって言った?」

「だって常務が」

「俺がなんだ?」

 そこで私は言葉に詰まった。常務は本当にわからないという表情をしているのにわざわざ何をされたのか口にするのも恥ずかしくなる。

「とにかく常務が悪いんです!」

 力一杯叫ぶと、常務は眉間の皺を伸ばすように軽く揉みほぐしている。そしてゆっくりと立ち上がって私を見下ろした。

「まぁ、いい。おかげで目も覚めた。とりあえず俺はまだやることがあるから、お前はもう帰れ」

「何か飲み物でも淹れましょうか?」

「いや、いい。そういえば、坂本がお前の淹れた紅茶を褒めてたぞ」

「それはよかったです」

 もう一杯お代わりまで飲んでいったことは黙っておこう。坂本様から聞いた話のことも。

「最初は酷いもんだったけどな」

「それなのに、いつも付き合って下さってありがとうございました」

 思えば常務は褒めることは決してなかったが、最初に私がお茶を淹れたときから全部残さずに飲んでくれていた。常務の言う酷いものであったのにも関わらずだ。

「どうした?」

「何がです?」

 デスクの方に歩み寄っていた常務が振り返って尋ねてくるので、私は訊き返した。

「やけに素直だなと思って」

「それは失礼しました」

「別に怒ってないだろ。お前こそ、なんか怒ってんのか?」

 そう指摘されて初めて、私は常務に対して妙に突っぱねていることに気付いた。それは間違いなく坂本様から聞いた話のせいなんだろう。
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