常務の秘密が知りたくて…
「秘書なんて必要ないって言ったこと気にしてんのか?」

 黙ったままでいた私に対し常務が頭を掻きながら再度尋ねてきた。そこのことではないのだが、珍しくばつが悪そうな表情をしている。

「あれは別にお前が必要ないって意味じゃない。正直、仕事面ではあまり期待はしていなかったが想像以上によくやってくれてる」

 歯切れ悪そうに告げる常務に対し、私は感情を出さないように取り繕うのが精一杯だった。常務の秘書になって初めて認めてもらえる発言をしてもらった。

 それがくすぐったくて嬉しくて。先程までざわついていた胸の中が喜びで満たされていく。しかし今はそれどころではない。

「あのトラブルって何があったんですか?」

 その質問に常務は顔をしかめて、しばらく言いよどんでいた。訊いてはいけない質問だったようでなんとなく申し訳なくなってくる。答えなくてもかまわない、と言おうとしたところで常務が話し始めた。

「来年度には承認申請する予定だった新しい医療器具について、急に共同開発していた病院側が降りると言い出したんだ」

「えっ!?」

「ここで頓挫すれば向こうだって不利益が被る。けれど病院側は降りると一方的に言うだけで話も進まない。このことが明るみになるのも今はまずいから、限られた人間だけで動いている」

 今日は法務課がいつも以上に慌しそうにしていたのはそういう理由だったのかもしれない。それにしたって

「そんな大事な話、私にしてもいいんですか?」

「お前だから言うんだ」

 きっぱりとそう告げると常務は天井を仰ぎ見た。

「ようやく実用化までもってこれそうなんだ。これでまた医療が変わるかもしれないってのに」
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