常務の秘密が知りたくて…
 悔しそうな物言いに胸が締め付けられる。会社の利益はもちろんだけど、常務が本当に医療のために仕事に臨んでいるのが伝わってきたからだ。

「常務は本当に仕事のことを真剣に考えているんですね」

 仕事は出来る人だとは思っていたが、いつもどこか気だるそうなので代々会社を経営しているから仕方がなくという気持ちもあるのかなと思っていたがそういうわけでもないらしい。

「なんだ。家がやっているからしょうがなくとでも思っていたのか?」

「い、いえ。そんなわけでは」

 あっさり見抜かれて私は慌てた。しかし常務はそれを見越していたようで自嘲的に笑い目線を遠くに遣った。

「どう、だろうな。俺の場合は自己満足だからな。ただの罪滅ぼしだ」

 それは何に対してなんだろうか。常務と話して、聞けば聞くほど常務のことがよくわからなくない。ふと坂本様の言葉が蘇った。

『あいつ、忘れられへん女がいるんやって』

 もしかして――。胸が急に痛み出す。心臓の音がわかるくらい煩い。だって目の前の常務はすごく切なそうな顔をしていた。

 こんなときなんて声をかければ、どうすればいいのかわからない。仕事のことで常務に対して有益なことなんて言えない。それでも

「常務の気持ちはどうであれ、そうやって真剣に取り組んでいることはもっと誇るべきですよ! その器具だってきっと沢山の人の治療に役立ちます、だから」

 そんな顔しないでください、という言葉は声に出来なかった。ただ常務の切ない表情がはっきりと目に焼きつて、いつまでも頭から離れなかった。
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