常務の秘密が知りたくて…
「長丘とは、もう寝たの?」

 だからか、その口から出た質問には驚いたが、それが彼から出たことにはあまり驚かなかった。心が一気に嫌悪感に染まっていくのを感じる。それは顔に出ていたのか堀田さんは下世話な笑みを浮かべた。

「その感じだと寝てないんだね。気を付けなよ、あいつ手が早いから」

「いらっしゃったご用件はなんでしょうか?」

 事務的な口調で返して自分の感情を抑える。こうやって人を不快にさせる物言いはわざとなのだろう。

「あいつの憔悴しきった顔を見たくてね」

 この人は何を言っているのか。意図が全く読めないが、あいつというのが常務のことで、常務にいい感情を抱いていないということはありありとわかった。

 そのとき部屋のドアが開く音がして視線を遣ると常務がこちらを怖い顔をして睨んでいた。

「堀田、お前何しに来たんだ?」

「随分と遅い出社だな。そんな余裕あるのか?」

 常務の低い声とは対照的に堀田さんの声は陽気そのものだ。常務は眉をしかめると一段と低い声で呟いた。

「そうか、お前がまた妙な手回しをしたんだな」

「手回しとはひどい言い方だな。経済戦略とでも言ってくれよ」

 常務は眉をつり上げたまま何も言わない。

「あそこの院長とは、うちの方が付き合いが長いしな。お前みたいに親が会社をしてるからって適当にやってる奴にはこれくらいのハプニングがあったほうがちょうどいいだろ?」

 そこでようやく何の話をしているのか理解出来た。急に病院側が降りると言い出した共同開発の件は、どうやらこの堀田さんの差し金らしい。そんなことが本当に出来てしまうのか、この人は何者なのか。
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