常務の秘密が知りたくて…
その日の夕方、自分のデスクの電話が鳴ったのでいつものように何気なく受話器をとった。
「こんにちは、白須絵里さん」
相手の声に驚いて咄嗟に私は何も言えなかった。相手は名乗りもしなかったがこの声には聞き覚えがある。しかも最近の話だ。聞こえてきた声の主は堀田さんだった。
どうして私に電話をかけてきたのか、どうして私のフルネームを知っているのか。色々疑問は沸き起こるが今はそこではない。
「どういったご用件でしょうか?」
努めて平静を装って答える。今は常務は会議中で席を外している。掌にじんわりと汗が滲みながら私は今朝のことを詫びるかどうか一瞬、迷った。
「今朝言いそびれたことがあってね。単刀直入に言うんだけど、白須さん、うちに来ない?」
謝罪を迷うも何も言われた言葉の意味が理解できず私は目を丸くした。そんなこちらの都合をおかまいなしに堀田さんは続ける。
「君、今経済的にも大変なんでしょ? うちに来たら待遇は同じで給料は今の倍以上は約束するよ、どう?」
突然の提案がどこまで本気なものなのかわからない。それぐらい堀田さんの口調は軽かった。
「どうして私を?」
「君が随分と長丘に入れ込んでいるみたいだから」
今朝のことを言っているのだろう。電話の向こうで、また堀田さんがあの下世話な笑みを浮かべているのが容易に想像できた。なんとなく電話越しでもあまりこの声を聞いていたくない。
「一度や二度寝たからってあいつは靡いたりしないよ」
「お言葉ですが、常務と私は貴方様が思っているような関係は一切ありません」
きっぱりと答えると急に堀田さんが黙り込んだ。わかってくれただろうか、と思っていると押し殺したような笑い声が聞こえてくる。
「なるほど。それで自分は特別だと思ってるんだ。可哀相、あいつにとっては秘書なんていくらでも代わりがきく存在なのに」
自分の中にある小さな穴を無理矢理広げていかれるような、そんな感覚。そんなこと、この人に言われるまでもない。知っている、わかっている。動揺を悟られたくないのに、次に堀田さんから出た言葉に私の心は一気に乱された。
「こんにちは、白須絵里さん」
相手の声に驚いて咄嗟に私は何も言えなかった。相手は名乗りもしなかったがこの声には聞き覚えがある。しかも最近の話だ。聞こえてきた声の主は堀田さんだった。
どうして私に電話をかけてきたのか、どうして私のフルネームを知っているのか。色々疑問は沸き起こるが今はそこではない。
「どういったご用件でしょうか?」
努めて平静を装って答える。今は常務は会議中で席を外している。掌にじんわりと汗が滲みながら私は今朝のことを詫びるかどうか一瞬、迷った。
「今朝言いそびれたことがあってね。単刀直入に言うんだけど、白須さん、うちに来ない?」
謝罪を迷うも何も言われた言葉の意味が理解できず私は目を丸くした。そんなこちらの都合をおかまいなしに堀田さんは続ける。
「君、今経済的にも大変なんでしょ? うちに来たら待遇は同じで給料は今の倍以上は約束するよ、どう?」
突然の提案がどこまで本気なものなのかわからない。それぐらい堀田さんの口調は軽かった。
「どうして私を?」
「君が随分と長丘に入れ込んでいるみたいだから」
今朝のことを言っているのだろう。電話の向こうで、また堀田さんがあの下世話な笑みを浮かべているのが容易に想像できた。なんとなく電話越しでもあまりこの声を聞いていたくない。
「一度や二度寝たからってあいつは靡いたりしないよ」
「お言葉ですが、常務と私は貴方様が思っているような関係は一切ありません」
きっぱりと答えると急に堀田さんが黙り込んだ。わかってくれただろうか、と思っていると押し殺したような笑い声が聞こえてくる。
「なるほど。それで自分は特別だと思ってるんだ。可哀相、あいつにとっては秘書なんていくらでも代わりがきく存在なのに」
自分の中にある小さな穴を無理矢理広げていかれるような、そんな感覚。そんなこと、この人に言われるまでもない。知っている、わかっている。動揺を悟られたくないのに、次に堀田さんから出た言葉に私の心は一気に乱された。