リーダー・ウォーク

「あんた最近ヘンじゃないか?何であいつの肩持つようなこと」
「え?か、肩なんてもってないですけど。普通の感想です」
「普通、ねえ。あんなつまんねー奴」
「お兄さんにそんな言い方はやめたほうが」

相手も小憎たらしいとは言ってたけど、でもやっぱり根底には弟という気持ちは
あるみたいで気にはしていたし。恭次は言うほどひどい人ではないと思う。
とかいったらまた不機嫌になりそうなので口にはしないけど。

「まさか専務のが将来性がいいって思ったとか?」
「私がそんなステイタスで態度変えるような女だと思ってますか?
思ってるならもう二度と私の前に現れないでくださいね」
「そうだよな。あんたはそんな女じゃない。…だからよけいムカつく」

松宮は立ち上がり稟の隣りに座ると彼女をギュッと抱きしめる。
刺し身をモリモリ食べていた稟は慌てて箸を机に置いた。
口の中は生臭い。急いで飲み込んでお茶が欲しいが無理そうだ。

「んっ……ま、待って待って…飲み込んでないから…待って」

顔が近づいてきたので急いで手で止めて。
飲み込んでいる間にも我慢出来なかったのか頬にキスをされる。

「嫌だ。稟と離れたくない。俺とチワ丸が寂しい思いをしてもいいのか?」
「崇央さん」
「今日はあんたにいっぱい俺の事知って欲しかったんだ。俺に興味を持ってくれて
嬉しかったしさ。周りは名前や肩書にしか興味持たないし」
「私とチワ丸ちゃんだけじゃ寂しくないですか?」
「十分」
「そうかなあ」
「そうなんだ。ほら。もういいだろ。キスさせて」

抱きしめる力がまたちょっとだけ強くなって、稟が顔を向けたらキスされる。
食事中であまりお行儀は良くないけれどそれで相手が止まるはずもなく。
まだ回数は少ないけれど少しはこの温もりと刺激になれてきたのか、
稟も前回よりは上手くキスができている気がする。

「……もういいでしょ?ご飯食べないと時間終わっちゃうから」
「ああ。そうだった。ちゃんと俺の部署も案内するからさ」
「ざっくりでいいです二度目だし」
「じゃあ今度は俺の席まで案内するから」
「そ、そこまで?」
「あ。そうだ。今進行中のブランドの商品も見せてやるから」
「いいんですかそんなことして」
「あんたどうせそんな話し人にしないだろ」
「しないけど」
「確か今日も撮影してたはずだから、もし好きなモデル居たら声かけてやるし」
「あ。あの。今スーツのCM出てる俳優さんとかも」
「は?なにそれ?知らねえ他所の会社のじゃないか?」
「……」

< 100 / 164 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop