リーダー・ウォーク

「どう、だ?」
「彼氏は……、居る」
「そ、そっか。居るよな。都会は出会いが多いし、2年も経ってるしな」
「最初は自分の夢が叶えば後はなんでもいいと思ってたんだけどね。
今は出会いって大事だと思ってる。都会へ出てきてよかった。凄く楽しい」
「そっか。なんか、稟変わったな」
「そうかな」

自分では変わりたくても何も変わってないと思って焦っていたけれど。
やはり都会へ出てきて一人で暮らし始めたから少しは変わったのだろうか。
それとも松宮が援助してくれて生活にゆとりが出てきたからかな?
彼の言葉の意図がまだはっきりとはわからないけれど。
あの頃とは少しは違って見えているのなら嬉しい、と思う。

「俺なんで稟を引き止めなかったんだろ。ほんと今更だけど」
「なに?急にマユちゃんが居るでしょ?」
「あの子は…先輩に強引に誘われた合コンで出会って。彼女から告白されて
すごい舞い上がっちゃって。俺、そういうの初めてだったから。最初は凄い楽しかった
んだけど、ずっと一緒に居るとなるとなんか違うっていうか。だから、別れたんだ」
「……」
「出張買ってでたのもお前に会って話したかったからっていうのもあって」
「それは残念でした。暫くは帰らないから。マユちゃんと仲直りしたほうがいいよ」
「稟」
「久しぶりに話が出来てよかった。ろくに話しもしないで仕事辞めて上京して
ごめんね。でもこの通りなんとかやってるから。これからもやっていけそうだから、
お互いに頑張ろう。次会えるのはまた何年後かわからないけど、元気でね。
そろそろ電車の時間じゃない?行ったほうがいいよ」
「あ。ああ。……、幸せそうでよかったよ。何かあったら連絡してくれ。じゃ」
「うん」

会計の紙を持って席を立つ大江を静かに見送った。
もし、今立ち上がって彼の後を追いかけたら。と考えなくもないけれど。
そうなると後ろの席の人が全速力で追いかけてきてとっ捕まるだろう。

まさかの告白に完全に吹っ切れた、とは言いづらいけど。

でもこうして私は席を離れずのんびり残りのコーヒーを飲んでいる。

これで少しは前向きになるかな。


「ああいう顔がタイプ?思ってたより小さいし」
「そうですね。ずっと一緒にいて疲れない人って大事だと思います。
大きすぎても怖いし。顔が良すぎても浮気しそうで嫌だし」

ふう、と深い溜息をしたら後ろで声がする。何度か席を立って
こっちに殴りかかってきそうな空気になったけれどよくこらえてくれたなと思う。
この人にしてみればの話だが。

「あんたがもしあいつを追いかけてたら。俺は追わなかった」
「へえ」
「心臓に悪い賭けは好きじゃないんだけどな」
「貴方の勝ちですから良いじゃないですか。チワ丸ちゃん車ですか?早く行きましょ」
「ああ。今頃早くケージから出せと怒ってるだろう」
「今夜は3人でご飯したい。前に言ってたカフェに行きませんか?」
「そうしよう」

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