リーダー・ウォーク
お店を出て松宮の車に乗り込んだら後ろでキャンキャンと自己主張するチワ丸。
もう少しだけ待っててねと声をかけてから犬も入れるお店の道案内をする。
彼らと一緒に行こうと先輩に場所を詳しく聞いておいてよかった。
「あれチワワだよな。やたらチワ丸を見てるがなんだ」
とにかく待つのが嫌いな松宮様。
せっかく来たのに席がないじゃ最悪なので事前に電話で席を確保。
無事お店に到着して席に案内されたらお隣に座っていたオバサマの
飼い犬らしきチワワがこっちをじっと見つめている。正確にはチワ丸を。
「女の子っぽいしチワ丸ちゃんが気になるんですかね。ご挨拶します?」
「いいよ。下手に近づいて噛まれたら嫌だ」
「お店に来るようなこは噛みませんって」
「わからないだろ。チワ丸だって怖がって…」
「めちゃくちゃしっぽふってますよ。気になってるみたい」
そういえばチワ丸は他の犬とのふれあいは一切ないんだっけか。
井上さんの家の犬たちともたぶんふれあってないと思われるので。
ランも相変わらず貸しきっていて他の犬は遮断しているし。
なにげにこれはチワ丸にとって初めての体験になるのでは?
「チワ丸はしたない。いいからお前は何時も通り座ってろ」
「怖いパパだねぇ」
「いいからあんたもそんな見るな。ババアが話しかけてきたら厄介だ」
「…もしかしてオバサマに絡まれるのが嫌なだけ?」
ペットも入店可能とあって席は一般のカフェより離れている。
ボリュームを落とせば多少ゴニョゴニョ喋っても聞こえないくらいには。
お隣の席のオバサマは着飾ったチワワちゃんと楽しげにディナー中。
関わりたくない、という顔をする松宮に苦笑しつつメニューを開いた。
「チワ丸。お前、これでいいか?よし。じゃあ決まりだな」
「私こっちのBセットにしたいです」
「ん。じゃあ、決まりな」
最初は何でも値段と相談したり気分で選んでいたメニューも
待つのが嫌いな松宮様のおかげで1分もあれば選べるようになった。
彼も特にこだわりはないようで稟と同じものをたのんでいたし。
チワ丸のメニューだけはじっくり3分ほどかけて選んでいたけど。
「…あ、あの。週末に行くペンションってどんな感じですか?」
「知り合いから聞いたんだ。ホームページもあるから見てみるか?」
「いえ。あんまり詳しくしっちゃうよりも実物で感動したほうが崇央さんも嬉しいでしょ?
だから楽しみにしておきます。その、何時に集合かなってかなって」
「そうだな目一杯感動しろよ。朝6時にあんたの部屋の前に行くから外で待っててくれ」
「わかりました。お仕事、大丈夫そう?」
「これでダメなら辞めてやるくらいの気持ちでやってるからなんとかなるだろ」
「…辞めないでくださいね」
それでも生活には困らないんだろうけど、辞める理由が大人として酷すぎるから。
「それくらいまじめに取り組んでるって事だよ。だから、今回は安心していいぞ」
「怪しいなぁ。あ。でも」
「俺を抜いてチワ丸と行こうなんてそんな薄情な女じゃないよな」
「あたりまえじゃないですかやだー」
「そんな風に言うってことはあんたに手を出してもいいって意味だよな?」
「……。…あ。ち、チワワちゃんがチワ丸ちゃんとじゃれてる」
「チワ丸こら!俺より先に女といちゃつくな!…ババアが見てるだろうがやめろっ」
「崇央さんもうちょっとボリューム下げて」