リーダー・ウォーク

期待が大きいぶんチョットのことでイライラしてしまうのだろうか。
彼が言うように、おにぎりくらいで怒りすぎたかもしれない。
もう二度と作らないけど。
まだ暫くは車内のようなので眠ってしまってしまいそうになる。

おにぎりを作るのに早起きをしたから余計眠いのかも。
昨日の夜のうちに具材も考えて出来る限り手作りしたし。

「……駄目だ、腹が立ってきて眠れない」
「え?」

苦労を思い出したら怒りで目が冴えてきた。

「音楽なにかかけてもいいですか?」
「あんたの好きなのあるかな」
「えーっと。洋楽。クラシック。ワンちゃんのヒーリング・ミュージック……。
人間用のヒーリングはないんですか?」
「ンなもん車で聴くか?眠くなるだろ」

結局ラジオを付けてのんびりと過ごす。テレビも観れるけれど。
落ち着いて少しくらい仮眠をとったほうがいいだろう、今日はまだ始まったばかり。
到着したら色々と建物を探索したりランで遊んだりするのだろうし。

彼も何かやりたいことがあるっぽかったし。

そうそう、やりたいこと。

……ヤりたいこと。

「……」
「おい。そんな真顔で睨みつけるなよ怖いだろ」
「…すいません、今ちょっと悪寒が走って」
「風邪か?」

すっかり頭から消えてたけど、そういえばそんな事言ってたっけ。
何にも準備してないんですけど。どうしよう。

「まあ、…なんとかなるだろ。うん」
「なあ。まだ怒ってんの?2個食ったろ?味も美味かったって」
「それはもういいです。帰ったら美味しいケーキ食べさせてくれたら」
「何でも好きに食っていい。俺はあんたとチワ丸と楽しく旅行がしたいだけ。
その為に真面目に働いてきたんだ、誰にも文句を言わせないようにしっかりとな。
上の連中には毎日こうだったらとか嫌味言われたけどさ」
「それって褒めてるんじゃ」
「アイツラは馬鹿にしてんだよ俺を。所詮やる気のない三男ふぜいがって。
ちょっとやる気出したら嫌味。やらなくても嫌味。どうしたって俺はこんな扱いだ」
「そうかなあ」

松宮からの言葉で稟も最初は兄たちが冷たい人のように思っていた。
けれど、彼らと話をしてみればそれなりに弟を評価してると思う。

過去に何かあったんだろうな、とは思っているが未だにその話を松宮から
されることもないし、これからも彼が話してくれるとも思えないから結局気には
なっても触れられずに居る。

「それでもきっちり仕事は終わらしてきた俺を少しは褒めてくれよ」
「オーヨシヨシーヨシヨシー」
「馬鹿にしてんのか」
「褒めろって言うから」
「犬じゃねえんだよ。もう少しこう、まあいい。もう30分もすりゃ着くから。
ついて部屋に入ったらまず俺にキスをしろ。それでいい」
「それでいいんだ」
「いいよ」

何だ意外にあっけないな。

もっと要求されるかと思ったが、流石にそんなしょっぱなからはないか。

「そっか」
「キスの場所はその時指定してやる」
「……」

あれ?
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