リーダー・ウォーク

 問題なく父親との食事も終えて帰宅。
まだ次男は帰っていない様子だったので彼の部屋へモチを運ぶ。
勝手に入ることに関して、モチの世話に必要な場合稟ならば
 自由に出入り可能という許可を事前に得ている。

 そんな話聞いてないイツ何処で話したと怒ってきたけれど。
 モチを自室へ置くわけには行かないでしょうの一言で黙った。

 猫の世話したくないからではなくてずっと怯えてるモチを見ているから
早く部屋に返してあげたいという気持ち。なのだと思う。


『連絡ありがとうございます。今会議が終わったのですが帰るにはまだ少しかかりそうです。
モチはどうでしょう?食事は終わったでしょうか?トイレは?』
「お疲れ様です。モチちゃんは外に出て少しストレスになったみたいで…食事はまだです。
苦しそうにはしていないのでベッドに寝転んで落ち着けば食事もとるかと」

 簡易的な報告メッセージを送ると数分で電話が来た。ちょっと驚いたけれど。
モチを心配しているのはよく分かるので、
 あまり不安がらせないように報告。それでも十分不安そうな声をしている。

『そう、ですか。僕が居ない間ひとりでは寂しがるかと思ったのですが。
知らない場所に行くのは逆効果だったみたいですね』
「でも何かあった際にすぐには対応出来ないですし、今回は仕方ありません。
私の匂いは分かってくれてるので良ければ暫くモチちゃんの側にいます」
『10分…いや、5分でいい。頼んでも良いでしょうか』
「はい」
『彼女の機嫌を取るお詫びの品を買ってあげないとな…』
「そう悩みすぎないでください。どうか気をつけて帰ってきてくださいね。
モチちゃんは恭次さんと居るのが一番なんだから」
『こんなこそばゆい気持ちを崇央も毎回しているんですかね』
「崇央さんはそういうの全面で受け止めたいタイプなので。さっきもチワ丸ちゃんが
ゲップしただけで大笑いして抱きしめて可愛い連呼してましたし」
『……。とにかく、よろしくお願いします』
「はい」

 唖然としている次兄の顔が安易に想像できてつい笑ってしまう。
スマホを仕舞いモチの様子をそっと確認すると自分のベッドで休憩中。
 そんな騒がしい場所には行かなかったけれどやはり疲れただろう。

 軽くそっと撫でると心地よさそうにニャアと言った。
 いつも撫でてもらってる人に早く会いたいんだろう、と思える声で。

 それから結局10分ほど側にいて「戻ってこないのか」とメールが来たので
 次兄の部屋を出る。モチはぐっすりと眠りの体制にはいっていた。



「チワ丸が凄い芸術的なウンコをした」
「まさかその写真を撮ってこれがそうだよなんていいませんよね。
松宮家の御曹司がそんなうちの子ウンコ自慢なんてしませんよね」
「そうだな、飯の後だしな。……今度見せるわ」
「崇央さん。チワ丸ちゃんは確かに頭も顔もいい文句のつけようのないチワワですけど。
でも、ちゃんと視野を広く持ってほしいです」
「稟のこと?ちゃんと見てるだろ。親にも挨拶したし、俺の展望も話した」
「そうじゃなくて」

 もっと根本的な。松宮家の抱える根深い闇のようなもの。

「稟は女だし一人っ子だから分からないだろうけど。いい年して
兄弟仲良くしてる方が気持ち悪いって。他の家だってそうだろうよ」
「そういうものですか?」
「ああ。一緒に住んでるからそう思うのかもな。引っ越そうか?
マンションでも一軒家でも家で管理してる物件幾つかあるし」
「そういうつもりじゃ。…男兄弟ってわかりませんね」

 従兄弟とかもそういえばそれほど兄弟仲良しじゃないかもしれない。
必要なときだけ連絡し合う、とかで。それじゃ今の松宮家は普通?
 仲が良くもなく悪くもない。チワ丸のお陰で衝突が減ったのならそれでいい?

「何でもいいよ。仲良くしたい奴としか俺は仲良くしないし、
どう思われようと俺の邪魔さえしなきゃ何も思わないししない」
「例えばあなたの邪魔したらどうなるんですか」
「例えば俺のチワ丸にナメたことしたらぶっ飛ばすし
稟に手を出したらどんな手使っても社会から追放するね」
「あ。チワ丸ちゃんこの前お尻クンクンされてたのまだ怒ってる」
「怒るだろ!オスの癖に!ぶっ飛ばす次見たら絶対ぶっ飛ばすあのダックス!」
「好奇心旺盛なだけです」
「とにかく。もう家のことは考えなくていいから。
俺とチワ丸の事を優先してくれるといいんだけど?
じゃないと俺は我儘だから苛ついて何をするかわからないぞ」
「脅されている」
「なあ、稟」
「……チワ丸ちゃんへるぷっ」

 視線を向けるとチワ丸はすっかりお気に入りの新ベッドで寝ていた。
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