リーダー・ウォーク

 食後。様子を見せるのにモチの写真を撮ってくれとスマホを渡された。
私も連絡先を知っているので送ると言ったのに。
 じっと怖い顔で睨まれたので大人しく受け取って撮影。

「この子猫ちゃんも崇央君の?」
「こっちは次男さんの子猫。モチっていうの」

 撮影を人に任せて本人は一旦席を立って電話をしに部屋を出た。
 二個持ちですか?って言ったら「あんたの貸して」と言われる。

 だから私が自分のスマホで写真撮って送ったら良かったんじゃないですか。

 という言葉は飲み込んだ。


「動物が好きなんだな。チワ丸くんも賢いしこの子も大人しい」

 すっかり父親を気に入ったチワ丸は抱っこされっぱなし。

「帰ったら匂いでりゅうがヤキモチ焼くかも」
「なあ、稟。お前も一度家に帰っておいで。爺さん婆さん、皆楽しみにしてる」
「うん」
「崇央君とはこのまま結婚しそうか」
「……それはまだ分からない。そんな余裕もてる歳じゃないのは分かってるし。
ずっと独り身で生きて行くのも嫌だって相手には言ってある」

 不思議なことに相手がその話題を面倒くさがる気配はない。
むしろ積極的。飽き性で女には苦労しないお金持ちさんは読めない。
 彼の考えは私には読めない。

「父さんも母さんもお前が心配だ。ああ、お前に信頼がないとかじゃないよ。
この心配ってのは親だからこそで。きっとずっとお前を思ってるんだ」
「ごめんねお父さん。…家にお店出すとか色々夢あったのに」
「いや。大事なのはお前の人生だ。お前が寂しくなくて、生活にも困らない。
楽しんで生きていける。それだったら何処でもいい」
「……うん」

 今まさにそういう人生を歩もうとしてるのに。なんでか胸が痛い。
 やっぱり両親は私に側にいてほしいと思ってるから。

 身の丈に合った人と田舎でのんびりトリミング暮らし。
 それを無視してる自分が、いやなのかな。

「父さん長旅でクタクタでそろそろ部屋に行きたいんだが」
「ホテルどこ?まさかビジネスなんて取ってないよね?」
「いや、それが崇央君から連絡があって何も用意しないで良いと」
「そう。なんだ。じゃあ部屋を取ってくれたのかな」
「母さんが夢みたいなスイートに泊めてもらったって言ってたからな。
ちょっと期待してたりする…」
「お父さん」
「だ、だって。スイートなんて新婚旅行でも泊まってない」
「もう」

 何も聞いてないけれど彼が用意してくれているのならいい部屋なんだろう。
写真を送り状態もメールで報告して、彼が戻ってきた。
 すり寄ってきたチワ丸を抱っこしてナデナデすると出発するという。

 お会計はもうすでに済ませた後のようでスムーズな退店だった。


「家にどうぞと言おうとしたけど。止めておいた」
「正解です。父がこれ以上萎縮しちゃうと困ります」

 途中の一流ホテルで父親を下ろして本日は解散。

「お義父さんを泊めるのにちょうどいい部屋ってのが無い。
家の父親の部屋ってまだ手つかずで放置されてるんだけど」
「そんなとんでもない。お気遣いなく。…十分大事にしてもらって。
私も父も崇央さんに感謝してます。嬉しい」
「あんた情に流されやすそうだから。父親が帰ってこいって。
俺なんか止めておけって言われたら従いそうだったし。
こっちも強気には出てたけど内心結構緊張してたんだ」
「……気遣ってくれたんですね」

 それとも分かりやすく不安が顔に出ていたのかな。

「そらそうだろ。そんな理由で振られたら一生女なんて嫌いだ」
「ふふ」
「笑い事じゃない」
「じゃあ私嫌われないように一緒にお風呂入る」
「それから?」
「体洗う」
「ほかには」
「寝る」
「……、まあそれくらいなら少しは気分良い」
「良かった」
「あんたは俺の手綱持つの上手い」
「ふふふ。どうでしょう」
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