リーダー・ウォーク

ランチを頂き休憩をしたら待ちに待ったランへ。
といっても貸し切りで他の犬は居ないので広い芝生が寂しい。
だが本人はまったく気にする様子もなくチワ丸をはなして遊ばせる。
真新しい蝶ネクタイの首輪が可愛らしい。


「なあ、見ててくれ。今日はちゃんと披露するから」
「あ。そうだ。お願いします」

暫くチワ丸がその辺を走り回っているのを眺めていた松宮だが
合図してチワ丸を側へ連れて来て稟のもとへ戻ってくる。
最初にここへ見学に来た時に披露してくれると言っていたもの。
あの時は見れなかったけれど。

「見てろ。…行くぞチワ丸」

松宮がチワ丸と少し距離を保ち視線を合わせ。

「おて!」
「おすわり!」
「ふせ!」

パッパッパと切れ良くチワ丸に命令し、チワ丸もそれにすかさず合わせる。
これはかなり練習してそう。本人はそのへんのことを一切言わないけれど。
でも、自室でこの練習を必死にしている彼とチワ丸を想像すると可愛らしい。

「凄いですね!チワ丸ちゃん!全部完璧じゃないですか!」
「極めつけはこれだ。…チワ丸、バン!」

松宮が自信満々で指で銃の形を作り撃つ真似をしたら合わせてコロンと転がるチワ丸。

「わあ。これはもう立派な芸じゃないですか」
「チワ丸ならこれくらい余裕だから」

嬉しそうに言っている彼を見ていると、さぞ練習したんだろうなとは思っても
そこは何も言わずに驚いて褒めて笑ってあげるのが良いのだろう。
実際短期間でこれだけ教えるなんて凄いことだし。

「チワ丸ちゃん。オテ」

ためしに稟も手を出してみたらおとなしくオテを返すチワ丸。

「どうだ。凄いだろ。こいつは他の犬とは違うんだ」
「そうですね。トイレもすぐ覚えたしご飯も食べてくれるようになったし」
「チワ丸。あの滑り台へ行くぞついてこい」
「初めてですから気をつけて」
「わかってる」

もうすっかりご機嫌でチワ丸を引き連れアジリティへ挑戦しに行ってしまう。
少し離れた所で稟もそれを見学中。松宮に気を使ってというよりも、
危なっかしくてハラハラするから少し離れた所で監視をするためだ。








< 31 / 164 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop