リーダー・ウォーク

男の人と一緒の布団に入って眠れるわけ無い、絶対起きてる。

そう思ってたのに気づいたらもう朝でした。

それも自分だけぐっすりと寝ていて、隣にはもう居なかった。
帰ったのかなと思ったらチワ丸のお尻が視線に入る。

「趣味の悪いカーテンだ」

そして聞こえてくる酷いセリフ。

「可愛いと思って選んでるんですけど」

聞かなかったフリをしたらよかったのに、つい反射的に反論してしまう。

「何だ起きてたのか」
「今起きました。カーテンつけてくれたんですね、ありがとうございます」
「つけないと眩しいだろ。ここは日当たりもいいからさ」
「そうですね」
「朝飯食いに行くぞ。さっさと準備しろ」
「ええっ…ち、チワ丸ちゃんは?」
「朝飯は食わした。チワ丸は留守番だ」
「すごい。連れて行かないんだ」
「ああ。……言い聞かせておいたから、大丈夫だろう」

さっさと準備をしろと促され慌てて起き上がってアレコレ準備。
お化粧や身なりに関しては諦められているので最低限だけで。
何より、待たされるのが大嫌いな人なので。

チワ丸を部屋に残し松宮と一緒に部屋を出る。

「何処か行くアテがあるんですか?」
「任せる」
「いいですか?その辺の喫茶店とかでも」
「小汚い店とかよほど不味いコーヒーが出てこなければ」
「……」

歩いてきた時に発見したカフェやレストランなどのお店が幾つかあって、
美味しいかは分からないが、見た目が綺麗な喫茶店を発見したので入る。
常連らしいお客さんがちらほら居るけれど散らばっていて静か。

「なあ、嫌味でムカついたろ?」

席についてモーニングを注文したら松宮がそんな事を言うので

「あはは。もう慣れましたよー?」

と明るくお返事。

「……。…俺の話じゃねえぞ」
「……どなたのお話?」

どうやら自分の性格についての懺悔ではなかったようで、凄く不満な顔をされた。

「真ん中の人」
「まんなか。……あ、お兄さんですか」
「あいつは病気だ。会社と家の事しかインプットされてない。
口を開けば松宮家の人間としてどうとかこうとか。イカれてる」
「……」
「何を言われても気にしないでいいから。あれはそういうロボットなんだ」
「……ロボですか」
「そ。まあ、あんたなら気にしないでくれると思うけどさ」

カチンときて言い返しちゃったけど。よく怒鳴り返されなかったなと今更思う。

「でも上総さんはとっても優しいお兄さんで」
「…なに?もうそんな仲いいの?」
「え」
「あの一番上のおっさんみたいなのがいいの?オッサン好き?」
「いいっていうか。…普通にいい人だなって。優しいし落ち着いてるし…」
「あんなの一番質悪いからな。絶対良くないから。すぐジジイになるから」
「……はあ」
「っていうかもうジジイだからあんなの」
「まだお若いですよ。年齢は聞いてないけどハツラツとしてて」
「……」
「ごめんなさいなんでもないです」

あーこれは完全に拗ねちゃった。黙っちゃった。
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