リーダー・ウォーク

次男さんはちょっと怖い雰囲気だったけれど、長男さんは優しいお兄ちゃんに見えた。
だから何を言っても怒って聞いてくれないのは兄と喧嘩とか何かされたというより、
単純に三男さんがひねくれ気味なのもありそうな気がするけれど、一人っ子の稟には
兄弟の微妙な感情というのは分からない。

「俺サラダだけでいいから。パン要らない」

モーニングセットを頼んだら小さいサラダにこんがりトースト。
ゆでたまごもついてきて稟はテンションがあがるが松宮は興味ない顔。
食いなよとトーストが乗ったお皿を渡してきた。

「それじゃお昼まで足りないから食べましょう」
「いいよ別に。要らない」
「美味しそうだし食べましょう」
「要らないって」
「ダメです食べましょうね」
「……」

が、稟に押し返され結局は食べる。
ワガママに見えて意外に強く言うと従うお坊ちゃま。

「あー美味しかった。やっぱり朝はしっかり食べないとダメですよね」
「そうか」
「そうです。チワ丸ちゃんにしっかり食べさせるようにご自分もしっかり食べなきゃ」
「あんたはあれか?母親か何かか」

食事を終えてお店を出る。コーヒーもパンも美味しくて満足で機嫌の良い稟。

「そんな歳じゃないです」
「そうだろうけどさ。まあ、いいよもう。さっさと戻ってチワ丸連れて帰らないとな」
「あ。そっか。何だか寂しいなぁ」
「……」
「帰っちゃうんだ」
「稟」
「チワ丸ちゃんだけもう少し預かっても」
「だろうと思ったよ!」
「何ですかいきなり」

何怒ってるんですか?と聞いても返事をしてくれなかった。また拗ねた様子。
部屋に戻りチワ丸に挨拶をしようとしたらさっさと抱っこしてキャリーに突っ込まれ

「覚えてろよ」

悪人の捨て台詞を残し部屋から出て行った。

「…あ。準備しなきゃ」

稟も仕事へ行く準備を慌ただしくして。帰りに色々と買い物をしようとメモを取った。
何時不意打ちで来ても良いようにコーヒーとカップとか。いろいろと。

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