リーダー・ウォーク

まだ足が若干痛いけれど、以前のデスクワークに比べればまだ回復は早い。
やはりトリマーとして立ち仕事をし始めて体力が付いたのかもしれない。
けど、給料日が来たら整体に行きたいと思っている。

今日も1日、犬猫に悪戦苦闘しながらも夕方の定時を迎える。

「吉野さん、今度お店のスタッフで飲み会があるんだけど参加するよね?」
「はい。是非」
「よかった。日にちはまだきちんとは決まってないんだけど、多分月末辺かな」
「分かりました」
「何がいいか希望があったらまた教えて」

帰る準備をしていたら先輩に呼び止められる。飲み会なんてOL時代は何かとよく
やっていたけれど、トリマーになってからは初めてだ。久しぶりでちょっと楽しみ。
お店の人たちはトリマーも販売も皆女性でそれなりに良い関係を築けていると思う。

やっぱりそろそろ都会でのお友達が欲しい。
彼氏だってまだ希望を捨てた訳じゃない、いい出会いがあれば。
松宮の顔が浮かんだがあの人は友達じゃないし、彼氏でもない。

一緒に寝てしまったけれど。あれは事故。事故なんです。

気を取り直しメモを片手に必要なものの買い出し。
何かあれば連絡をしてくれと言われているけれど、やっぱり出来ない。
呼んだってどうせ荷物持ちとか車を利用するだけになるのだから。
一気に買い込めるのは魅力的だけど少しずつ増やしていけばいい。

「しまった。あの部屋冷蔵庫なかったんだった…」

安いドライヤーを買おうと量販店へ来て気づいた。
ずっと部屋に備え付けの極小冷蔵庫を使っていたから忘れてた。
暫くは生物を買うのを控えればいいだけだからそこはいいか。

電気代も節約できるし。

必要な物を買い込んで両手に荷物でマンションへ戻ってくる。
疲れきって倒れそうでもやっぱり新しい部屋は気分が違う。
エレベーターを上がり、部屋に入り、荷物をその辺に放置して倒れこむ。

「すみませーん。お荷物お届けに参りました―」

30分ほどしてインターフォンがなった時は松宮が来たのかと思ったが
玄関のモニターに写ったのは彼ではなく、ダンボールを抱えた宅配業者の人。
何か注文したっけ?と不思議に思いながらもオートロックを解除して上がってもらう。

サインをして箱を受け取り宛名を確認。

松宮崇央だ。

ということは。

「チワ丸ちゃんグッズに紛れて自分の物まで入れてるよあの人…」

箱を開けるとチワ丸の食器にそれをセットする台に可愛いクッション。
あと立派なトイレ。予備のごはんにおやつに服など。これなら何時でも預かれる。
さっそくリビングの一角にチワ丸スペースを作ってあげた。
松宮の私物は放置しようかとも考えたけれど、それをみたら怒りそうなので
稟の部屋にあるクローゼットにしまいこんだ。

「……メール、しとくか」

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