リーダー・ウォーク
セレブ犬です

何なんだろうこの関係。どうしたらいいんだろうこの気持ち。
モヤモヤしてきた。けど、だからって私に何が出来るんだろう?
さんざん意地悪してきた隣の人はいつの間にか眠ったようで今は静か。

抱きしめる大きな手をなんとなく、そっと、握って。

「……」

稟も目を閉じた。そんな休日の終わり。


「吉野さん、この前言ってた飲み会なんだけど。日にちと場所決まったから」
「はい」
「…お酒の種類も豊富だから。吉野さんも満足できると思う」
「あははは。そんなに?楽しみですね」

出勤してバックで制服に着替えていると先輩に声をかけられる。
飲み会の事をすっかり忘れていた。松宮家へおじゃまする日と被らないようにしないと。
といってもまだ上総からは連絡は来ないし、崇央もそのことは何も言わずに帰った。

忙しいのは分かるのだが、出来れば早めにご連絡が欲しい所。

「それと。…イケメンも来る」
「イケメンですか」
「この世界にいると中々出会えないじゃない?でも、私の知り合いに
顔の広い人が居てさ。そこから芋づる式に相手を探して頂きました!」
「合コンみたいですね」
「まあ、それだと店長が居づらいだろうからあくまでぼかしてぼかして」
「ははは」
「吉野さんもいい出会いが出来るといいね。人のこと言えないけど」

いい出会い、か。

そういえば彼氏とか欲しかったような気がしてたのだけど。
そんなものが出来たらその場で別れさせられる未来しか見えない。
隠してこっそり付き合うとかは難しそうだし。

今は松宮チワ丸、崇央にかかりきりだ。

「友達なら欲しいなあ…」

お店の人も先輩も気さくで話しやすいけれど、友達とはまた少し違うわけで。
お友達とかならたぶん、そこまで怒ることはないはずだ。
異性でなかったら。

『昨日は突然申し訳ありませんでした。了承してもらえてとても嬉しいです。
さっそくですが明後日の夜はどうでしょうか?よろしければその時間に迎えのものを
むかわせますので、お返事お待ちしています』

お昼休憩に戻ってくるとメールが1件。上総からだ。すぐに
『大丈夫です。6時ごろなら大丈夫ですので、お待ちしてます』
という返事をして一息。

明後日なら飲み会にバッティングしないし、服を買う時間もある。

流石に手持ちの服で豪邸へ乗り込む勇気はない。

ドレス、まではいかなくてもよそ行きの何かよさ気な服を買わないと。

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