リーダー・ウォーク

「嘘です。今のは嘘です。ただカッコつけて言ってみただけなんです嘘なんです!」
『俺に嘘なんかついたことないだろ。良くも悪くも素直な女だからな。あんたは。
大丈夫、ちょっとした話し合いをするだけだから。で。今、どこ?何か騒がしい場所みたいだな』

こんななんてこと無いスーパーに来るの?本気で?
稟はその場に一瞬固まり、慌てて弁解する。

「本当に嘘なんです信じてください私スーパーに居るだけなんです夕飯の買い物してるだけで」
『何だよ2人で夕飯の買い物?生意気なことしてんじゃねえか?』
「だ、だから」
『あんたの部屋の近くにあるスーパーね。井上に聞けば分かるだろう、動くなよ』
「崇央さん…」

でも相手は話を聞くきはないのか早口にまくし立てる。
どうしようこのままここに来られても。

ちょっと涙目になって彼の名を呼ぶ。

『……。冗談でも嘘でも、今後二度と言うな。もちろん、行動に移すことも許さない』
「…あの、どうしてそんな」
『俺が許さないと言っている』
「は、はいっ…ごめんなさい」

ここに突撃することはなさそうだけど、それでも目一杯謝った。
だからなんでこんな気を使う必要があるんですか?
私はただ犬の世話係じゃなかったんですか?

ボーナスでちょっとくらいは貴方ともお付き合いがあるけれど、

これじゃまるで、…まるで

彼女みたいじゃないですか?

『話がそれたけどさ。明後日家にくるだろ?』
「は、はい。その予定ですけど」
『俺が迎えに行くから。6時でよかったよな。店の裏で待ってて』
「良いんですか?」
『俺が付いててやったほうがあんたも緊張しないでいいだろ?』
「たしかにそうですね。心強いかも」
『だろ。じゃあ。…また』
「はい」
『ほんとに、ひとり?』
「悲しいくらいひとりです」
『…俺、行ってもいいけど。さ』
「チワ丸ちゃんください」
『じゃあな』

あ、切られた。
不満そうだった気がするけれど、先ほどの怒りとは違うのでまだ良いだろう。

「お姉ちゃん、彼氏と喧嘩?大変だねえ」
「は、はは…」
「ほら。こっちの刺し身盛り合わせ、半額にしてあげるから。こっちにしな」
「あ。ありがとうございますっ」

彼氏じゃないんですけども。

ああ、何で私こんな疲れてるんだろう……。


さっさと帰ってご飯食べて寝よう。
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