リーダー・ウォーク

お店の清掃を終えて戸締まりをしっかりと確認しようやく外へ出た。
休み明けの仕事はちょっとだけだるさが加算される気がする。
店長や他の店員たちと別れて歩いて帰宅するから余計にそう思うのかも。
田舎とちがって都会は夜でも明るくて怖くはないけれど。

「こういう格好とか崇央さんすきかなあ。…こっちとかもいいかな」

何時もならカネがないからとスルーするお店に柄にもなく入る。
この前彼の家に行くために急遽それっぽい服を買ってそれっきりだったが
生活にも多少の余裕が出来てきたのでここはデート服の1枚2枚。

といってもデートするのはドッグランとかワンちゃん関係になるのだろうけど。

スカートとかも敬遠してきたがデートなら1枚くらいあってもいいかな。

「そのスカートリボンが可愛いですよね」
「え。ええ。そ、そうですね。…でも、私じゃちょっと可愛すぎるかな」
「そんな事ないですよ?お客様は顔立ちが可愛らしいから」
「ま、またー」

店員さんにおだてられ乗せられて結局買ってしまいました。
ちょっと短めの可愛いフレアスカート。それに合わせた上着も。
買う予定はなかったのに2着も。あの店員は凄腕すぎる。

せっかく服を買ったのにそれから暫くは連絡が無くて平和な?静かな?
けど少し悶々とする日々が続いた。たぶん仕事が忙しいのだろう、
そんな時に特に用事もないのに電話しても悪い気がして出来なかった。

そんな自分にもまたちょっと悶々として。

あっという間に迎える金曜日の夜。

「この前の二次会で来てた人。ほんっとにイケメンでびびるから」
「そんなに?やっぱりモデルさんですか?」
「普通に仕事してる人だけど。先輩が押すのもわかるわ」
「へえ」
「でね。また飲み会しようって話になってて。今日どう?吉野さんも」
「え。わ、私もですか?」
「明日休みでしょ?いいじゃない、3対3で!」

帰る準備をしていたらやたらゴキゲンな先輩に声をかけられる。
飲み会というか合コンのようだけど。どうしようか。
でもどうせ今日も連絡してこないんだし、ちょっとくらい憂さ晴らしに飲んでもいいよね?

「私でいいなら…」

返事をしかけた所で携帯が震えた。もしかして彼だろうか。

『今あんたの店の駐車場にいるから。何時あがり?それまで待っててやる』
「は」
『はじゃねえ。何時だ?いいよ何時まででも待つからさ』

いきなりなんですかこの人は。

「いえ。あの。もう、終わってます」
『お。ラッキー。じゃあ出てこいよ』
「でも飲み会の誘いがあって」
『断ったらいいだろ』
「いやでも」
『断りづらいのか?わかった、俺がそっち行って断ってやるから待ってろ』
「すぐにそっち行きます」

この人は何時も何でこんなタイミングなんですか?

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