リーダー・ウォーク
犬派と猫派

チワ丸を引き渡し、案の定夜遅くまで居座った松宮をなんとか追い出した翌日。

「い、いらっしゃい……ませ」
「何ですかその態度は。声もちゃんと出ていないし、そんないい加減な接客をするんですか?」
「い、いえ!申し訳ありません!…まさかこんなすぐ来ていただけるとは思わなくて!」
「声が大きい」
「すみません」

出勤した夕方、まさかのお客様。
来てくださいとは言ったものの、まさか本当に来るとは思っていなかったから。
最初は見間違いかと思って商品の品出しをしつつチラチラと見ていた稟。
彼は声をかけてくる様子もなくただじっと動物たちを眺めているだけだった。

意を決して声をかけたらやっぱり、松宮恭次。

「……この近くで食事会があるので、まだ時間が早いから。ちょっと、覗いてみようと」
「なるほど」
「トリミングはお休みですか」
「今日分のトリミングは終了してますから」
「……なるほど」

妙にそわそわしているのは何故だろう。今まで何度か会っているけれど
普段からこんな忙しない人じゃないし落ち着いた印象を持っていたけれど。
流石にトイレとかじゃないだろうし、だとしたら。

「あ。抱っこですか?どのこが気になります?」
「い、いや。この後人と会うので。……それに、猫はこうして眺めているのが一番いい」
「猫派ですか。でもそんな感じするかも」
「見た目でわかるんですか?」
「何となくですけど」
「そんな事までわかるようになるのか。専門職となるとやはり違うんだな」

勝手に決めるなと怒るかと思ったら意外に素直に受け入れている。
もしかして思っているほどこの人は怖くないのかもしれない。
出会いが最悪だったからちょっと身構えているところもあったけれど。

「あはは。…あ。ちなみにこっちのアメショーとスコとノルウェージャンどのこが良かったです?」
「……あの柄の綺麗なやつ」
「アメショーですね。抱っこも多いし人気なんですよね」
「早く決まればいいですね。あんな狭いところでは可哀想だ」
「そうですね。皆が優しいいい家に迎えて貰えたら嬉しいです」
「……優しいいい家か。家では無理だな」
「そんな事ないですよ。チワ丸ちゃん居るじゃないですか」
「あれは崇央が勝手にかってきて勝手に家に解き放っている犬ですよ。最近では僕の靴を
咥えて振り回してオモチャにして、…躾がなってないのは飼い主と同じだ」
「それってもしかして崇央さんの匂いと間違えてるのかも?」
「だったら、犬のくせに鼻が悪いようですね」
「でも兄弟なんだし」
「あんなのは一族の恥さらしですよ。…俺だって、優秀とは言いがたい。
そろそろ時間なので失礼します」
「また何時でも来てくださいね。お待ちしてます。次こそは抱っこもしてみてください」
「……機会があれば」
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