リーダー・ウォーク

「今日こそは抱っこしてみてください」
「……しかし」
「コロコロあります」
「下手に触ったらストレスになるんじゃ」
「そんな何時間も抱っこするんじゃないですよね?」
「当然だ。……、…わかった。では、少しだけ」
「はい」

最初は自分が声をかけたら来たのかと思ったけれど、
2度めとなるともしかしたら猫が気になっているんじゃないかと思ってくる。
恭次は平静を装って入るけれど明らかに見ているのは犬ではなく猫。

それもお気に入りらしいアメショーだけ。


「……いや、やはり抱っこはやめておく」
「ここまできて?」
「貴方がそのまま抱っこしていてください、そのままでいい」
「わかりました。どうですか?可愛いですよね」
「……そうですね」

やっぱりスーツに毛がつくのが嫌なのだろうか。
弟の崇央は気にしてない、というかスムースなのでその心配もないけど。
たぶん彼なら気にしないで気になったらその子を抱っこしていたと思う。

「猫ちゃんは自由で好奇心旺盛です。でもそこも魅力的ですよね」
「なるほど。言いつけても大人しくはしていないのか。崇央のようなものだな」
「猫ちゃんはそれが許せちゃうくらい可愛くってふわふわしてますけどね」
「貴方も言いますね」
「あ。ごめんなさい、恭次さんからしたら可愛い弟」

ついいつもの調子で言ってしまったけど、今は仕事中。
松宮家の方は皆大事なお客様。

「いいえ。あれは可愛くない。小憎たらしい生意気な奴ですよ」
「でも完全に見捨ててるわけじゃないですよね?」
「あれも松宮の人間ですし、…弟には違いないですから」
「よかった」
「貴方から見て崇央はどうですか。兄さんはもう後継者を選びたいらしい」
「お仕事してるところを見たことがないのでなんとも」
「…ああ。そうか、そうですね」

やることはやるけど定時には帰る。それ以上はしない。そんなイメージ。
きっちりと遅くまで残って明日のことまでやってるのが恭次のイメージ。
どちらが会社のトップに相応しいかと言われるとなんとも言えない。
ただ上総の言うようには恭次はトップには興味がないらしい。

「性格的にも興味なさそうですし」
「アレで少しは仕事に責任をもって行動するようになったほうですからね」
「大変そうですね」
「なんとか改善させようと必死になればなるほど鬱陶しがって寄り付かなくなる。
女にもだらしがない。…最近はまじめに付き合うようになってはいますが」
「……何時まで持つでしょうかね」
「それをコッチに聞かれも」
「ですよね」

ふと脳裏にお泊まりの事が浮かんだ。もし、体を許してそれで満足されたら。

それでもう飽きて捨てられたりするのだろうか。


不安。

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