天に見えるは、月
実夏の希望で、香凛たちは会社近くの雑貨屋も兼ねたカフェに入った。
この店の雑貨はセンスの良いものばかり置かれていて、香凛もここで買った小銭入れを愛用している。実夏は雑貨ではなく、ここのイケメン店長が目当てだ。
「で、どうなのよ」
注文を終えてから、実夏はキラキラした目で香凛に問いかけた。
「なにが?」
「なにがって、営業一課のことよ」
そんな顔で聞かれるようなことはなにひとつない。香凛は「毎日雑務に追われてるよ」とため息交じりに答えた。
「モンドとはどうなの?」
なるほど、実夏が本当に聞きたかったところはそこか、と香凛はげんなりする。
「この間、仕事以外のことで注意は受けたけど、とりあえず業務的には何事もなく」
「へえ、凄いじゃん!」
実夏は驚いたような、感心したような声を上げる。
「あのモンドと二週間一緒に働いて、何事もないって凄いよ! 香凛も前任者のこととか聞いてるでしょ?」
二週間何事もないことが凄いと言われる環境ってどうなのだろう。香凛は改めてこんな状況に自分を追いやった黒木課長と岩佐部長を呪った。
「聞いてるけど……。多分、顔を合わせている時間が短いからじゃないかな」
「モンドのアシスタントなのに?」
「モンドは基本的に来客か打ち合わせか外出しているかのどれかだから、部署内にいることのほうが少ないよ」
モンドと然程顔を合わさずにすんでいるのはいいのだけれど、一方でそのどこにも同席させてもらえていないことに、やはり不安を覚えてしまう。
弓削にそれとなく相談してみたが「これからじゃない?」と軽くあしらわれてしまった。そんなものなのだろうか。
「ふうん。じゃあ、今後モンドと一緒にお出かけってこともあるかもね」
「お出かけって……」