カタブツ上司に愛された結果報告書
正直に全部話すと、田中さんは面食らったように言葉を濁した。


「それではお話というのは?」


そしてすかさず問いかけてきた田中さんに、今度はこっちが面く食らってしまう。


「えっと……それは」


話したいこと、聞きたいことならある。
けれど、どうしても躊躇してしまう。


だって一度気持ちを口にしたら、止まることなく全部吐き出してしまいそうだから。


ワガママな感情も、嫉妬心も全て――。


全部言っちゃったら、田中さんに呆れられちゃうよ。ううん、嫌われちゃうかもしれない。
大人な彼だからこそ、余計に。

私の感情なんて、子供染みたものばかりだもの。


「美海……?」


なにも言わない私を気遣うように囁かれた声に、胸がトクンと鳴ってしまう。


ズルイな、田中さんは。

名前で呼ぶなんて。……いくら客足が少ないと言っても、会社の人がいるかもしれないじゃない。私みたいに隠れるように話を聞いているかもしれないのに――。

それでも不意に呼ばれた自分の名前に胸が高鳴ってばかり。
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