カタブツ上司に愛された結果報告書
あれほど灯里ちゃん探しに奔走していたというのに、鶴の一声の如く、代表はすぐに自室へ戻っていった。


代表室のドアがぱたりと閉じられた瞬間、一気に騒ぎ出すオフィス内。
それはもちろん、さっきの一部始終についてだった。


「さすが“ロボット人間”。今日もあの代表をたった一言で連れ戻したな」

「そりゃ当たり前じゃない。我が社の優秀なロボット人間様なんだから」


口々にみんな口にしている〝ロボット人間〟とは、創設当時より代表の秘書を務めている、田中実(たなか みのる)さんのことだ。

私より九歳年上の三十三歳。


身長百七十センチで、細身のスタイル。羨ましいくらいさらさらで艶のある黒髪を、いつも耳の上辺りできれいに切り揃えられている。

黒く細いフレームの眼鏡の奥には切れ長の瞳があり、入社して二年目になるけれど、あの切れ長の瞳がニコリと細められたところを、私は一度も見たことがない。


いや、私だけではない。
もしかしたら誰も見たことないのかもしれな。田中さんが笑った顔なんて。
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