カタブツ上司に愛された結果報告書
私の気持ちを考えて必死に弁解する姿に、和まされていく。


けれど田中さんが尊敬する代表が話していたことだもの。間違いじゃないと思う、本当だよきっと。

田中さんが代表に嘘を話すようには思えない。

尊敬しているって言い切っていたんだもの。そんな人に嘘をつかないよ――。


でもいくら考えても仕方ないよね。
灯里ちゃんの言う通り私がまだ出会う前の話だもの。


「ねぇねぇ、この前のデートの話聞かせてよ。田中さんとのデートどうだった?」


話題を変えてきた彼女にクスリと笑ってしまう。


「いいけど、じゃあ灯里ちゃんの話も聞かせてね。噂のハイスペック婚約者のこと」

「えぇっ!? ……いや、その……」


どもってしまった灯里ちゃんにますます笑ってしまう。


そうだよ、過去は過去だ。

私だって田中さんの他に付き合ってきた人がいるし。
田中さんにだっていて当たり前。
好きな人だっていたに決まっているじゃない。


大切なのは今だよね。田中さんは、私のこと……本気、だよね?

必死に自分にそう言い聞かせ、灯里ちゃんの婚約者の話に耳を傾けた。
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