部長っ!話を聞いてください!
逃げられて、交わされて、うまくその手に押し付けることが出来ない。
「ぶちょーーーっ! 動かないでくださいっ! 受け取ってください!」
「だから嫌だと言ってるだろ」
腕を掴もうとするけれど、指先が空を切る。
私より部長の方が、動きが素早い。
「もらってもらわないと、困るんです! これ男物ですし――……」
「俺じゃなくて、他の男(ヤツ)にあげればいいだろ!」
苛立った声が、胸に突き刺さった。
仕事中に、部長の怒った声を聞いたことがある。
けどそれは随分昔に一度だけで、その時は誰かが重大なミスをしたとかそんな理由があったはずだ。
だから滅多にあることじゃないのに……今私は、部長に怒りを向けられている。
「……部長」
泣きたくなってくる。
部長の怒りの理由が低血圧とかそんなことではなくて、なんとなく、私にあるような気がしてきたからだ。
「何で今日、冷たいんですか? 私、何かしましたか?」
ショッピングバックの持ち手を両手で握りしめ、部長を見据えたまま、私は一歩一歩にじり寄っていく。
「住んでいるところが一緒だって、私に知られたことが嫌なんですか?」