部長っ!話を聞いてください!
部長のすぐ傍のデスクで仕事をしていた男性社員が苦笑いしながら、席を立った。
「もう昼休憩の時間ですよ」
そして腕時計をちょんちょんと指さして、また笑う。
戻ろうとしていた足を引き戻し、私は壁掛け時計を見上げた。
「部長、時計見てください! 休憩時間です! 私の話を聞く時間です!」
両の拳を握りしめながら訴えかけると、男性社員が「すげー必死」と笑ったのが聞こえた。
じっと見つめて数秒後、部長がため息をつき、椅子から立ち上がった。
「トイレ」
「なっ」
やっぱり私から逃げるようにフロアを出て行こうとする。
廊下に出たところで、私は部長の腕をがっしりと掴んだ。
「部長っ! 私の話を聞いてくださいっ!」
「だからトイレに」
「話を聞いてくれるまで、どこにだって着いて行きますっ! お供しますっ!」
「お前はバカかっ。トイレまで着いてくるなっ!」
私の手はトイレまであと三メートルの所で振り払われてしまった。
「ぶちょーーっ!」
部長はちらりと私を見てから、トイレの中に入っていってしまった。
追いかけていきたい……気持ちはすごくあるけど、さすがの私も、やっぱり男性トイレの中まで踏み込んで行くのは恥ずかしい。