部長っ!話を聞いてください!
トイレの前で待っているのも気が引けて、でもここから離れたくもなくて、廊下をウロウロしてしまう。
うろうつく最中、プレゼントのことを思い出し、私は急いで自分のデスクに戻った。
引き出しの中から、両手で丁寧にショッピングバックを取り出し、私は笑みを浮かべた。
話を聞いてもらいたいだけじゃない、プレゼントだって受け取ってほしい。
そのためには、まずは部長が出てきた所をしっかり捕まえねば!
今度こそ、しっかり話を聞いてもらおう。
頭の中で、部長確保までのシミュレーションをしつつ廊下に戻ると、トイレの扉が僅かに開いた。
その隙間から顔を出し、辺りの様子を伺いはじめた部長と、すぐに目が合った。
「部長――……」
「神崎部長ーー!」
歩き出そうとした私の横を、一人の女性社員が駆け抜けていった。
「こんなところにいたんですね! もう、探しましたよ!」
「何かあったか?」
廊下に出てきた部長の前で立ち止まった女性は、私と同じ企画・経理課の先輩社員。
私が部長の誕生日を知った時、あの場に居合わせた女性だ。
「神崎部長! 誕生日おめでとうございます!」
先輩はとびっきりの笑顔で、某高級ブランドのロゴが刻印されているショッピングバックを、部長に差し出した。